クリニック開業・運営メディア『カイミー 』です。
今回はテナント物件でクリニックを開業する際に注意するポイントをまとめてみました。
実際に借りてしまってから不具合等が見つかってしまっても遅い部分も多々あり、しっかりと事前のチェックが必要となります。
よろしければぜひチェックくださいませ。
患者様(お客様)目線でチェックすべきテナントポイント
テナントを借りてクリニックを開業する際に、最低限患者様の目線になってチェックすべきポイントが3つございます。
飲食店などの各種店舗もお客様目線で見ることが重要とされており、競合も多々あるクリニックでもそうしたお客様目線=患者様目線という視点は非常に重要となっております。
患者様が実際に通いやすい立地かどうか
テナント物件を探す際に注意が必要な点が通いやすさとなります。
例えば駅から徒歩数分という立地であっても、実際に歩いてみたらわかりづらい・迷いづらい立地というのは多く存在します。
また、診療科目によってはあまり駅近で人が集まる場所は避けた方が患者様的に顔いやすいケースも多々あります。
特に美容クリニックや精神科クリニック、産婦人科などは駅近でもあまりに人遠いの多いところは避けたテナント物件を探すことが重要です。
テナントの外観も重要な要素
マンションでも築年数が古い外観が古びた物件をリノベーションという形でお部屋を大改装して、新築同様になる方式もここ数年はやっております。
そうした大規模なリフォームも可能な現在では、クリニックも古いテナントビルなども内装はしっかりとキレイなクリニックとリフォームすること自体は可能となります。
…ただ、いくらクリニック内がキレイんできたとしまして、患者様はクリニックの外観で判断する方というのは少なからず多くいらっしゃいます。
その為、ある程度キレイな外観をもったテナントを探すのは集患対策を考えた場合には必要なポイントとなります。
寒さや方角など1年を通じた快適性で考える
テナントによっては、外気からの寒さや日の当たり方などもしっかりとしたチェックが必要となります。
古い建物の場合には、隙間風が酷く冬は非常に寒なるなどが起こってしまう場合もあります。
また、方角によって日が当たりやすい・当たりづらいなどもしっかりとしたチェックが必要となります。
電気や給排水、空調換気などの建築設備は医療サービス品質に直結
建築設備とは、照明やスイッチなどの電気設備、水を流す水道設備、空調設備などです。これらは、「蛇口をひねれば水が出る」「換気扇を回せば換気ができる」といった基本的な機能を確認するだけでは不十分。以下にご紹介するように、目には見えない部分を含めてチェックしてください。
【チェック1】電気設備
最大のポイントになるのが、電気容量の上限です。確実に医療サービスを提供するために、安定した電力供給は大前提です。特に、MRIやCT、透析設備、X線設備機器など、容量に大きな負荷を与える機器の導入を予定しているクリニックでは注意が必要でしょう。
まずテナントが入っている建物の「電気種」が、高圧電力か低圧電力かを調べてください。高圧電力の場合は、建物に引き込む電気容量をある程度大きくできます。一方で、低圧電力の場合は引き込める限界値が49.9kVAと決まっています。
次に、自身のクリニックの電気使用量が、そのテナントの限界値に収まるかを検討しましょう。クリニックにあるすべての設備が、常に稼働して電気を使用しているわけではないはずです。時間帯によって使用量が異なったり、またX線設備などを使って瞬間的に大きな電力が必要となる場合もあるでしょう。そのあたりも考慮して、問題なく医療サービスを提供できるか確認してください。テナントの広さによって、使用電力が限界値ギリギリ、または超過してしまう場合には、内装会社を通じて電力会社と協議するのもひとつの方策です。
なお、十分な電気容量が確保されているクリニックビルでも、ビル全体の容量は決まっているため、他のテナントとの兼ね合いで制限がかかる場合もあります。「クリニックビルだから安心」というわけではありません。逆に、電気使用量が低いクリニックは、事務所ビルのテナントなどでも開業できるケースがあります。
【チェック2】給排水設備
商業用ビルや事務所ビルでテナントを探す場合、給排水設備をしっかりとチェックしてください。なぜなら、クリニックは意外と水を使う場所が多いからです。例えば、トイレと手洗いは患者さん用とスタッフ用で2ヶ所あるのが望ましいでしょう。ほかにも、診察・処置用の流し台、検尿用の流し台、スタッフルームのミニキッチンや洗濯機……水場が少ないと思われるクリニックでも、合計8~10ヶ所くらいに上るものです。
こうした水場をどれくらい設けられるかは、給水管の口径のサイズによっておおむね決まります。口径に合わない給水口数を設けると、水圧が下がってしまうからです。歯科や消化器内科などでは、給水口が20ヶ所を超える場合もあります。給水管の口径にはくれぐれも注意してください。
また、排水設備はバリアフリーと深く関係しています。排水は、高いところから低いところに向かって流れます。つまり、排水管が長くなれば、高低差も大きくしなければなりません。これが、区画内のバリアフリー化を邪魔する要因になります。
なおクリニックビルの場合は、共用部などのクリニック外の床に対して、内部の床が低い構造になっていることがあります。これは、バリアフリー法に対応しつつ、排水設備も自由に設計できるようにするためです。
「給排水設備がクリニックの奥にしか見当たらない」「床が下がってない」などといった懸念点があるときは、内装設計会社に相談してみましょう。
【チェック3】空調換気設備
コロナ禍の今、先生方から最も多く質問をいただくのが空調換気設備に関することです。換気を考える際には、まずその「量」に注目してください。
換気量の基準は、根拠とする法令や条例、そして部屋の用途や滞在人数などによって異なります。多くのビルでは、「区画がスケルトンの状態(仕切りが一切ない状態)で、建築基準法に照らし合わせた換気量を確保できる」程度に、外壁貫通孔(換気の出入り口)が設けられているとされています。しかし、弊社が実際に現場調査をすると、かなりの確率でクリニックに必要な換気の出入り口が少ないテナントに出会います。これは新たに外壁貫通孔を設ければクリアできる問題ですが、許可が下りないケースもあるので、事前に必ず確認しておきましょう。
盲点になりやすい「バリアフリー新法」「消防法」「建築基準法」も要確認
最後に、クリニック開業で避けて通れない各法規について見ていきましょう。法規に関しては、詳しく知らない方がほとんどだと思いますが、テナントを借りるときに重要なポイントになるので、最低限は押さえておいてほしいところ。特に、クリニックビルではないテナントに開業する場合は、しっかりチェックする必要があります。
①バリアフリー新法
バリアフリー新法(2006年施行)は、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」。例えば車椅子の方のために段差をなくしたり、視覚障害者のために点字ブロックをつけたりといった福祉関係の法律ですが、これがクリニック開業にあたっては課題になりやすいのです。
本来は、すべてのビルがバリアフリー新法に則った構造になっているべきですが、古いビルではほとんどが対応できていません。しかも、過去にクリニックが入っていなかったバリアフリー新法に未対応のテナントビルに開業しようとした場合、クリニックが入ることで、建物全体に法規制が及ぶ場合があります。クリニックが入る際に、ビル全体でバリアフリー新法をクリアしているかチェックされることがあるのです。
例えば、クリニックのあるフロアまで上がるエレベーターを車椅子対応の仕様にするよう指摘されることがあります。この場合、「エレベーターの改修費用は誰が負担するのか?」という問題が発生するでしょう。
②消防法
消防法は、人の生死に関わる法律であるため、絶対に押さえておかなければなりません。消防法で定められている条件をすでにクリアしている、またはクリアできる見込みのあるテナントを必ず選びましょう。
例えば火災報知機の設置義務がない建物にクリニックが入った場合、火災報知機や消火栓などの消防設備が必要になることがあります。その設備は誰が設置、管理するのか、話し合いが必要になるでしょう。また、建物によってはスプリンクラーが必要となるケースがありますが、スプリンクラーを後付けで設置するのはまず不可能です。事前に必ず確認しましょう。
③建築基準法
建築基準法は、地震が起きても建物が倒壊しないように、柱の強度などの安全基準を満たしてくださいという法律です。ビルを建築した時点でクリアしていますが、テナントにクリニックが入ると条件が変わり、問題が生じる場合があります。
例えば商業用ビルでは、火災が発生したときに備えて、排煙できる窓を設置しなければいけません。しかし、ワンフロアに2つのクリニックが入ったとき、片方のクリニックに窓が設置できないケースも出てきます。従来のテナントの位置関係の問題で避難階段への通路を確保できていなかったことについて、クリニック開業時に違反を指摘されてしまったというトラブルが起きた事例もあります。
ここまでバリアフリー新法、消防法、建築基準法、それぞれに事例を挙げて見てきましたが、これらはあくまでも一例に過ぎません。法規に関しては、テナント契約前に正しい知識をもって細かく確認しておく必要があります。